大田区議会海外親善訪問調査 2


平成231213日に我々訪問団は、ブレーメン市庁舎を訪問しました。本年度より大田区立中学校生徒海外派遣によりブレーメンとの交流が始まりました。

今回の子どもたちの派遣のお礼に市長を表敬訪問するために準備を致しましたが、12月のクリスマス前であることもあり、日程調整ができず代わりに儀典長を訪ねることになりました。

はじめに、ドイツの政治体制を考えながらブレーメンの概要に触れたいと思います。

 

1 ドイツの政治体制

ブレーメンはドイツ連邦共和国を構成する16の州のひとつである「自由ハンザ都市ブレーメン州」であります。

このブレーメン州はブレーメン市とブレーマーハーフェン市の2市で構成されています。

ブレーメン州議会は定数83名のうち、8割の68名をブレーメン市に、2割の15名をブレーマーハーフェン市に割り振るものされております。ブレーメン州議会において行政機関である Senat(ゼナート) は、議院内閣制の合議体で、ブレーメン州首相はブレーメン市長を兼ねております。

よって、Jens Böhrnsen(イェンス・ヴェールンゼン)州首相(市長)と呼ばれます。

今回は、外務省欧州局中・東欧課及び在ハンブルク日本国総領事館小坂節雄総領事からヴェールンゼン市長に直接、大田区議会の公式訪問団たる我々の接遇を依頼して頂きました。

ブレーメン州政府の方々にお声掛けにより下記の方々に会談にご参加頂きました。

 

Frau Birgitt RAMBALSKI        Protokollchefin, Senatskanzlei

ビルギット ランバルスキ氏  ブレーメン州政府儀典長

Frau Andrea FROHMADER     Internationale Beziehungen, Senatskanzlei

アンデラ フローマーダー氏  ブレーメン州政府国際関係課長

Herr Tomio SAKAMOTO       Stellvertreter des Japanischen Generalkonsuls

坂本 登三雄氏        在ハンブルク日本国総領事館首席領事

Herr Wolfgang HAAS        Prasident der Deutsch-Japanischen Gesellschaft Bremen

ヴォルフガング ハース氏   ブレーメン独日協会会長

Herr Reinhard PLATTER     Referatsleiter Berufsbildende Schulen, ministerielle

ラインハート プラッター氏  und schulbetriebliche Aufgaben Senatorin fur Bildung,

Wissenschaft und Gesundheit

     職業学校責任者兼、州政府教育、学問、健康の責任者

Herr Prof. Dr. Tim GOYDKE     Studiengangsleiter Angewandte Wirtschaftssprachen

ティム ゴイデケ博士     Japanisch, Hochschule Bremen

      ブレーメン単科大学教授(日本経済学専攻)

Herr Werner BERGMANN     Japanischlehrer, Gymnasium an der Hamburger Strase

ヴェルナー ベルクマン氏   ハンブルガー通りギムナジウム 日本語教師

Frau Etsuko NOJIMA        Japanischabtlg., Gymnasium an der Hamburger Strase

野島 悦子          ハンブルガー通りギムナジウム 日本語部門担当

Frau Lotte von LIGNAU     Sprachschule CASA

ロッテ フォン リングナウ氏 CASA語学学校

 

 

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会談のはじめに、今回の訪問団長である安藤充大田区議会議員からランバルスキ儀典長に高瀬三徳大田区議会議長、清水繁大田区教育委員会教育長から市長宛ての信書をお渡しました。

信書を渡す安藤団長(写真中央)と受け取られた

ランバルスキ儀典長(写真右

今回の訪問の大きな目的は、今年から大田区立中学校生徒海外派遣によって大田区とブレーメンとの交流が始まり、関係をより一層深めることです。同時に日本とドイツの教育システムの違いを学び、また大いに参考にしあうことによって教育行政の前進を図りたいと思います。

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  ドイツの教育システムについて

教育システムについてはプラッター氏から説明を頂きました。

3歳から6歳までは幼稚園に通うというのはほぼ共通ですが、日本の小学校1年生から小学校4年までは初等教育であるGrundschule(グルンドシューレ)に通います。

日本の小学校5年次相当の際に、大学進学を前提にしているgymnasium(ギムナジウム)や大学進学をせずに職業訓練を行うHauptschule(ハウプトシューレ)、大学進学と職業訓練の中間に位置するRealschule(レアルシューレ・実科学校)に分かれます。

ギムナジウムは高校卒業資格を得るAbitur(アビテューア)という試験に合格することを目的としており、その後、大学進学を基本路線とされております。

レアルシューレからギムナジウムに転入する生徒もおり、全体では30%の学生がアビテューアを目指す勉強をし、残りの70%が職業訓練学校に入るそうです。

このような教育制度は戦前の日本とよく似ており、ドイツの教育制度を学んで明治政府が参考にしたとも言われております。

戦後は、アメリカの教育制度を基に6・3・3・4制を制定したことにより、現在の日本においては分かりにくいものであると思います。

現在は330種に分かれている職業訓練の科目ですが、250種程度に減らす計画であるそうです。もう少し分かりやすく広い概念に変える方向のようです。

職業訓練学校に通っている際は、実習(企業内訓練)3日、学校2日というスパンでの通学となり、実習を終えると学校に戻るというように、現場での経験を重視していることがわかります。

また、総合大学や単科大学に通いながら職業訓練学校に通う学生がいることや、大学を卒業後に職業訓練学校に入校する学生がいる等、日本における大学と専門学校の関係に似ている側面をみることもできました。

しかし、決定的な違いは社会での評価です。

移民や家庭の事情で職業訓練を受けていない人がおりますが、その人たちの多くが就職できないということです。社会は職業訓練を受けていない人間を採用することは少なく、まずそこに入ることが就職の第一歩と考えられているところです。

また、アビテューアをとっても45%が職業訓練学校に進み、55%のみが大学に進学するという統計になっております。

しかし、ブレーメンでは学校と企業の連携がスムーズにできており総じてうまくいっているそうです。

また、若い人たちがしっかりと手に職をつける重要さについても力説されておりました。

日本の専門学校や商工業学校と一緒で、学校に通っていても勉強をしていない学生も多くいるそうで問題は共通していると認識いたしました。

今回の参加団員に大森昭彦議員がおられ、現役の職業訓練校の指導員としての見地から質問も多くなされました。

 

今回、この席上でドイツの教育制度を学んだことにより、マルティンホフや手工業者会議所の教育センター視察においての理解がより一層深まることとなり、大いに意義のあるものとなりました。

 

 

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今回の会談に先立ち、フローマーダー国際関係課長のご案内でユネスコ世界遺産であるブレーメン市庁舎の見学をさせて頂きました。

この建物はヴェーザールネッサンスと呼ばれる北ドイツに見られる後期ルネッサンスの卓越した建築様式であり、600年間ほとんど姿を変えていないものです。上と下の階にある二つの豪華なゴシック様式の広間は、自由ハンザ都市ブレーメンの政治的重要性を示しているとユネスコは評価しているものです。

 

世界遺産の一室での会合となりましたので、荘厳な中に和気あいあいとした雰囲気で会談を終了することが出来ました。また、再度の訪問をお約束しました。

市庁舎を出るとき受付には写真の掲示がされておりました。

今回の訪問では、会議の半分以上の時間が教育問題に関する意見交換をでした。

 

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3 ブレーメンと日本との交流について

今回のドイツ訪問に先立って、ブレーメン市のロイドパサージュ商店街と友好提携を結び、今年で20周年を迎えた川崎市のモトスミ・ブレーメン通り商店街を視察し、商店街のコミュニティセンターにて、伊藤博理事長及び山田一之前理事長(現相談役)からブレーメン市との交流や行政との関わりなどについての話を伺い、情報交換をさせて頂きました。

ここでは、ブレーメン市と20年の間、交流を続けているモトスミ・ブレーメン通り商店街について触れたいと思います。

(1)なぜ「ブレーメン」なのか

  昭和60年に中小企業庁よりコミュニティマート策定事業(無利息貸付を行う)モデル商店街として指定され、昭和63年コミュニティセンターを開設。「中世ヨーロッパ風の商店街」をコンセプトに「商店街モール化事業」を進め、平成元年にモール化工事完成。

「ブレーメン」の名称は、「中世ヨーロッパ、親しみのあるグリム童話、モトスミがなくてもわかる商店街」などのコンセプトをもとに商店街理事会で話し合いを重ねた結果、平成2年に「元住吉西口商店街」から「モトスミ・ブレーメン通り商店街振興組合」に名称変更した。

(2)ロイドパサージュ商店街との交流

  「ブレーメン通り」という名称を決定したときに、「勝手にブレーメンの名称を使ってよいのか」ということで、当時のブレーメン駐日代表部の佐野岸男氏(JETRO出身)を通して、平成2年にブレーメン経済振興公社のシュメデケ総裁が来日した際に「名称無断使用」を謝罪し、翌年ブレーメン市を訪問し正式に使用許可を得た。

  それがきっかけで、佐野氏が平成3年にブレーメンに新しく誕生した「ロイドパサージュ商店街」を紹介し、橋渡しとなって、平成3年3月にロイドパサージュ会長を日本に招き、友好提携の調印を行った。

  それ以降、相互に交流しており、周年行事には商店街訪問団が相互に訪問、ブレーメンの布製エコバックを輸入し、モトスミでエコバックキャンペーン実施、ロイドパサージュ会長を招き「商店街が取り組む環境問題」をテーマとした国際シンポジウムを実施、ブレーメン通り10周年にロイドパサージュから「ブレーメンの音楽隊像」が寄贈され、式典に川崎市長、ロイドパサージュ会長等が参加、ロイドパサージュ10周年に日本の巨大半纏や平塚市の七夕飾りを寄贈し式典に参加、モトスミの商店街で結成した音楽隊がロイドパサージュで演奏するなど積極的な交流を行っている。

  今年で友好提携20周年を迎え、モトスミで毎年開催しているフライマルクト2011にロイドパサージュ会長ら4名が来日され商店街へバナーをおみやげに持参され、記念式典を行った。

(3)ブレーメン市と川崎市との交流

   平成18年にモトスミの理事長が山田氏から現在の伊藤氏に交代したのを機に、この2人と川崎市議会議員潮田智信氏(前議長)らがブレーメン市・リューベック市(川崎市の姉妹都市)を訪問し、ブレーメン市長に川崎市長よりの信書を手渡している。

  

4 今後について

このように、大田区の隣に位置する川崎市とブレーメンの関係が深化している現状において、本区も中学生をきっかけにしてブレーメンとの交流が始まりました。

例えば、商業分野における交流によって、大田区で行われているOTAフェスタや池上本門寺朝市などの機会を利用しドイツの物品の販売を行うことや、反対にドイツで大田区の商品等を売ってもらことができれば、相互にメリットがあると思います。

また、工業会の技術協力や製品販売にも期待が持てると思います。

ドイツにはメルセデスベンツのドイツ第二位の工場があることや、宇宙産業の中心地となっております。大田区のものづくり技術は日本だけでなく世界をリードしているもので、宇宙産業等共通するものも数多くあります。

今後も引き続き交流を続け、共存共栄になれるようにしていきたいと思います。

次回はそういった観点の中から商工業分野の提携や観光客の相互訪問などによる経済性を重視した会談を行いたいと思いました。

 

会談終了後、在ハンブルク総領事館坂本領事と懇親会を開き意見交換を行いました。

ドイツの国民性や習慣、日独交流150周年記念イベントの成果など多岐にわたりました。

また、今後のブレーメン市をはじめとする大田区の国際交流についての協力もお願いしました。

 

 

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参考文献

ブレーメン市 

http://www.bremen.de/

ドイツの教育制度 森栗 恭子http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/dbps_data/_material_/localhost/sosiki/004/koryu/augsburg-seinen-hokoku014.pdf

ドイツの職業制度とマイスター制度

http://www.geocities.jp/monomegu/2.html

ドイツ教育事情

http://www.geocities.jp/calclub1998/germanedja.htm

教育指標の国際比較 平成232011)年版

http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/kokusai/__icsFiles/afieldfile/2011/03/10/1302640_1_1.pdf

独立行政法人 労働政策研究・研修機構

http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2004_6/germany_01.htm

ドイツのユネスコ世界遺産  ユネスコ世界遺産ドイツ協会編

 

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