自由民主党大田総支部シンガポール視察団 訪問報告
自民党大田総支部のシンガポール視察団の一員として2012年4月9日(月)から13日(金)まで4泊5日(機中泊2日を含む)で行ってきました。
マリーナベイサンズというラスベガスのカジノリゾート運営会社・ラスベガス・サンズによって開発されたカジノ併設型のホテルに宿泊しました。
ここはシンガポールの代名詞と言われるほどで、2010年4月にオープンしたシンガポールで2番目となる公営カジノを有する複合施設です。3棟の高層タワーの上に船型のプールでつながっている名所です。
実際のこのプールで夜間と日中に泳ぎましたが、57階から見る施設は絶景です。日本でもこういったコンセプトのものがあればと思うほどでした。
湾にせり出した環境なので、雰囲気としては横浜を思い出すような雰囲気でした。
また、公営カジノがあり開業から9か月で建設コストの6分の1を回収したとの話もあり、日本においてはカジノ特区・カジノ法案を通さなくてはなりませんが、日本でも大田区でも検討する価値は大きくあると思いました。
また、デパートのような高級ブランドのお店が並んでおり、カジノで勝ったお客さん買いやすい環境整備がなされております。
こういった考えも羽田空港の跡地開発にとっても大いに参考になりました。
また、注にまとめましたがシンガポールの福祉政策に関心をもつきっかけとなり、この政策がすぐに正しいという話ではありませんが、参考にすべきところもあると思いました。
Ⅰ シンガポール共和国概要
1.面積
710平方キロメートル(東京23区(約700平方キロメートル)とほぼ同じ)
2.人口
約508万人(うちシンガポール人・永住者は377万人)(2010年)
3.民族
中華系(華僑系)75%、マレー系14%、インド系9%、その他2%
4.言語
国語はマレー語。公用語として英語、中国語、マレー語、タミール語。
Ⅱ シンガポール国際企業庁との意見交換
1. 概要
午後はシンガポール国際企業庁のチュア・テックヒム副長官などと意見交換を行いました。ここは日本で言う経済産業省というべきところで、対外投資を積極的に支援している組織です。
参加者はチュア副長官、チャン北アジア・太平洋副局長などでした。
なお、チュア副長官は東京大学に通われていたこともあり、流暢な日本語で会談もほとんど日本語で行われました。
2.チュア副長官発言の骨子
・シンガポールは積極的な市場開放を行っているが、日本の金融システムはグローバル化していない。
・金属加工分野が得意なのが日独共通である。ただ、日本は国内志向、ドイツは国外企業と連携を視野に入れている。
・日本の製造業は日本のため、シンガポールの製造業は世界のためと思う。
・アジア圏の人口が増えている。例えば、ベトナム人が15000人、ミャンマー人が50000人などである。
・人口が増えることは交流が深まることであり、経済関係も強化されると思われる。
・観光立国でもあり、1年間に1300万人が観光客として来訪している。
・JALの子会社となっていた機内食サービスのTFKをシンガポールで買収した実例もある。(※注1参照)
・日本の潜在能力に対する評価は高く、日本の企業価値や土地などにも積極的に投資したい。
・シンガポールの年金システム(中央積立基金)について、日本とは違い強制貯蓄制度であるので労使折半の金額も約20%で積み立てていくようになっている。(※注2参照)
・海の石油の80%はシンガポールが保有
・350万人の土着民と150万人の外国人が住んでいる。
・シンガポールはインフラ産業、物流、空港、港に特化している。
・空港・港をハブ化し産業力を強化している。
・ローマ空港の株も保有し、積極的な投資を行っている。(※注3参照)
・将来的に日本の空港の株もほしい。
・シンガポールの港湾等には日本も投資している。
・日本は国費留学生にはよいが、私費留学生にやさしくない。その点の整備をするべきだと考える。
・GDPの25%は製造業。雇用を生むために保護している。人件費は5万新(シンガポール)ドル
・GDPの3.5倍の投資をしている
・GDPよりGNPを上げようとしている。
・世界に36の拠点があり、中国10、インド4となっている。
・日本には産業革新機構(※注4参照)があるが、国内投資しかしない組織となっている。
こういう閉鎖的なことをやめ、国外へ投資することが真の国際化であると思う。
Ⅲ メイプルツリーイベストメンツプライベートリミテッドとの意見交換
ヒュー・ユーンコンCEOらと意見交換を実施しました。
今回の視察のもともとの要因は、大田区に新しくできた大田区東糀谷6丁目工場アパート(OTAテクノCORE)です。
以下骨子です。
・大田区には53ヘクタールの跡地があり、うち17ヘクタールに大田区は産業支援施設を作る予定。
・メイプルツリーグループとして12500億ドル位を運用し、インド・マレーシア・韓国・ベトナムなどに投資運用している。
・香港にあるDFSは外国人に人気がある。
古典的な工場街をオフィス中心に再開発を行い、収益率・生産性をあげている。
・今回の東糀谷工場アパートについて、投資効果は利益率よりキャッシュフローの安定性(年率4%程度)を求めている。
・古典的な工場ではなく新創業産業というべき特徴のある独創的な企業を支援する。
・こういった工場であれば古典的な工場ではないと考える。つまり、オフィスと工場の中間に位置している。
・シンガポールでは国土が狭いこともあって、食住職の接近を政府として考えている。
・またエアロトロポリス概念に基づき、空港近接区域の開発を考えている。(※注5参照)
・ソーラーパネルは費用対効果が低いのであまり採用が進んでいない。
・5年前~現在に1000億強の投資を行っている。
・日本では物流や重工業への投資も考えている。
参考文献
外務省ホームページ シンガポール共和国
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/singapore/
注1 シンガポールのSATS、TFK株をJALから取得2010年11月29日16時5分
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201011290055.html?ref=reca
[シンガポール ロイター] シンガポールの航空運営サービス会社SATSは、日本航空インターナショナルが保有する機内食サービスのTFK全株50.7%を78億円で子会社のSATSインベストメンツが取得したことを明らかにした。
TFKは成田空港や羽田空港で30の航空会社にサービスを提供している。
注2 シンガポールの政策(2011年改訂版)福祉政策編
http://www.clair.or.jp/j/forum/pub/series/pdf/j41.pdf
シンガポールの福祉政策は、中央積立基金(Central Provident Fund:以下CPF)と呼ばれる強制貯蓄制度を軸とした”自助”を基本理念としている。
1955年には、CPF制度が発足した。これは、勤労者が定年退職または不慮の事故等で働けなくなった場合に、経済的な保障を行う目的で被雇用者と雇用者双方が給与の一定割合を積立てる一種の強制貯蓄制度である。
シンガポールの福祉政策は、①自助②互助③間接的援助の3つの原則に基づいて実施されている。まず、基本として老後の生活や医療は国民の自助により行われることを目指している(「自助の原則」)。しかし、何らかの理由により自活が出来ず援助が必要な人たちは、家庭や地域社会を中心とした福祉ボランティア団体による互助により救済することとしている(「互助の原則」)
また、自助、互助では救済できない場合には、政府は困窮者に対し直接資金等の補助を行うことをなるべく避け、ボランティア団体等に対し必要な財源的援助等を行うことにより、間接的に困窮者を援助することを原則としている(「間接的援助の原則」)。
全てのシンガポール国民及び永住権取得者を対象とする強制貯蓄制度で、日本の社会保険で採用されている「賦課方式」でなく、「完全積立方式」を採用しており、拠出金は政府が定める一定の拠出率に従って拠出され、被雇用者自身のCPF口座に貯まっていくものである。定年後の経済的な保障の他、住宅・医療・大学ローンの支払いなどにも利用が可能で、総合的な社会保障制度として機能している。
月収500S$を超える被雇用者、月収50S$を超える被雇用者を抱える雇用者、及び年収6,000S$を超える自営業者にCPFの拠出義務がある。
現在(2012年2月時点)の拠出率は、例えば、月収が1,500S$以上で50歳以下の場合は、雇用者が給与の16%、被雇用者が給与の20%であり、給与額の36%が被雇用者自身のCPF口座に貯まっていくことになる。
公務員もCPFに加入する義務があるが、退職年金(一定の条件を満たし た者が任意で加入できる)の支給対象であるか否かで拠出率は異なり、対 象である場合、拠出率は軽減されている。自営業者については、医療費の 支払いに利用されるメディセイブ分を拠出する義務がある。
積立金には、普通口座には最低年利2.5%以上、特別口座及びメディセイブには4.0%以上の利子をつけることが法律で定められている。なお、この積立金及び利子収入は、ともに非課税である。
拠出金は、加入者が55歳になれば、最低限度額(万一の場合に備え保留しなければならない金額)を残して引き出すことが出来る。また、55歳以前でも、特定の利用目的に限っては引き出すことが許されている。引き出し目的の多くは住宅購入であるが、株式の購入等の投資目的でも、政府の認可した対象であれば引出し可能となっている。なお、最低限度額は、2011年7月より131,000S$(約8,515,000円(1S$≒65円で計算)となっている。
医療費の原資となるCPFが国民の強制貯蓄制度であるため、政府の負担にはならず、政府支出の抑制につながっている。
両親扶養法(the Maintenance of Parents Act (chapter 167B))
1995年に制定され、60歳以上の自活できない両親の扶養(月々の生活費の拠出)をその子供に義務付けるものである。更に、1996年6月には、子供に対し扶養の強制を図る裁定機関として「家族扶養裁判所」が設置された。子どもが高齢の両親を扶養する能力があるにもかかわらず扶養しない場合、その両親の申し立てにより同裁判所が扶養にかかる審議を行う。裁判所がその子どもが扶養可能と判断した場合、裁判所の命令として扶養の義務を負うことになる。
高齢者の家族間によるケアを維持するため、政府は多世代の同居を推奨しており、同居世帯には、所得税の控除などのインセンティブを与えるなど、同居を推奨する仕組みを構築している。
生活保護(Public Assistance Scheme)がある。高齢や病気などの理由で働くことが出来ず、また扶養者も無い者に対しては、生活保護制度があり、家族規模に応じて月額360S$(単身者)から1,150S$(5人家族以上)の現金給付が受けられるほか、無料の医療サービスや教育費の補助等の制度がある。
家賃補助システムもある。国家社会福祉審議会が所管する家賃及び公共料金補助制度により援助が行われている。シンガポール国民及び永住権者が対象となり、一定額の収入を下回る世帯に対して支給される。
家賃に対しては110S$、公共料金には60S$、管理費には35S$の補助が上限額とされている。
少子化対策として、2008年8月に改定され、第1・2子については4,000S$が、第3・4子については6,000S$がそれぞれ給付されることとなった。
また、子のために開設した特別口座(CDA:Children Development Account)に親が預金した額と同額が、第1・2子については6,000S$まで、第3・4子については12,000S$まで、第5子以降については18,000S$まで振り込まれることなった。また、2008年10月からは、有給出産休暇が16週間に拡大された。
第一に少子・高齢化社会への対応である。2011年の合計特殊出生率は1.20である。2010年の国政調査によれば、65歳以上人口の全人口に占める割合は9.0%となっている。社会開発・青年・スポーツ省によると、2030年には65歳以上の人口比率が18.7%となる見込みである。
第二に女性の社会進出による家庭内の高齢者等の扶助の不足である。
注3 【シンガポール】チャンギ空港社、イタリアの同業者と資本提携2010/03/03(水) 10:58
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0303&f=business_0303_056.shtml
<クアラルンプール>
チャンギ空港を運営するチャンギ・エアポート・グループ(CAG)は3月1日、空港コンサルティグ部門子会社のチャンギ・エアポーツ・インターナショナル(CAI)がイタリアの空港運営会社、エアロポーティ・ディ・ローマ(AdR)に1億Sドル(約63億円)の資本参加を行ったと発表した。
CAIによる過去最大の投資。欧州の首都空港にアジアの業者が出資したのは初めて。CAIは、AdR発行済み株式の95.76%を保有する持ち株会社ジェミナに5%出資した。
AdRは、フィウミチーノ空港とチャンピーノ空港で構成するローマ空港グループを2044年まで運営する権利を与えられている。
フィウミチーノ空港はローマへの玄関口で、昨年の旅客数は3,380万人と欧州の空港で上位10位に入る。チャンピーノ空港は市中心部に近い小規模空港で、格安航空向け。昨年の旅客数は480万人。
CAIは業務面でもAdRと提携し、空港運営、商業開発、基本計画作りでAdRを支援する。
CAGは昨年7月、シンガポール・チャンギ・エアポートを民営化して誕生した。インドのベンガル州における、空港を中心に据えた総合開発事業エアロトロポリスへの参加を決めており、投資事業は今回が2件目。(情報提供:AsiaX)
注4 株式会社産業革新機構
http://www.incj.co.jp/
産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(産業再生法)に基づき設立された官民出資の投資ファンドであるがある。
政府が1420億円、民間が100億円出資しており、また1兆8000億円の政府保証がついている。
注5 エアロトロポリス概念
http://economy.hankooki.com/lpage/society/201202/e20120228173754120400.htm
日本の読売新聞によると、仁川(インチョン)経済自由区域の松島(ソンド)国際都市の松島国際業務団地について「空港との近接性とグローバル・ビジネスの物理的速度が重要になり浮上する新しい都市 概念のエアロトロポリス(Aerotropolis)の典型であり人口移動の力学関係が早く変化する時代にあって都市開発の解答」と紹介した。
エアロトロポリスは空港を中心に立てられる新しい都市形態だ。松島国際都市全体面積の10分の1規模で開発されている松島国際業務団地はまた、去る2010年7月と11月に各々米国週刊誌ENR(Engineering News Record)に世界10大建設プロジェクトと紹介し、英国ガーディアン紙は環境と技術を結合した全世界5代未来都市の一つと紹介した。
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