政教分離と地方公共団体

第2回のテーマは寺社仏閣との連携による地域活性化施策についてです。 地域活性化、インバウンドという観点で欠かせないのが、日本の伝統である神道や仏教のイベントであります。 市役所などは観光課、外郭団体の観光協会、また産業振興課、商工会などと連携をしながら地域最大のお祭りなどと連携をすることがあります。この時に、憲法の政教分離原則に反するのではないかという指摘です。 これについて参考にすべき最高裁の判例があります。 津地鎮祭訴訟 – 1977年(昭和52年)7月13日 最高裁 合憲。津市体育館建設起工式の際に神職が地鎮祭を行った。市長は神社に対して公金からの支出を行った。 この点、最高裁は、政教分離原則をゆるやかに解しつつ、目的・効果基準を用い、憲法20条3項により禁止される「宗教的活動」とは、宗教とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし信教の自由の確保という制度の根本目的との関係で、「相当とされる限度を超えるもの」、すなわち、その「行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為」に限られる。 その判断は「主宰者、式次第など外面的形式にとらわれず、行為の場所、一般人の宗教的評価、行為者の意図・目的及び宗教意識、一般人への影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って客観的になされねばならない」旨説き、神式地鎮祭は、その目的は世俗的で、効果も神道を援助、助長したり、他の宗教に圧迫、干渉を加えるものではないから宗教的行事とは言えず、政教分離原則に反しないとした。 芦部信喜 憲法 第5版 pp.158.159  ※芦部先生は日本憲法学の権威 この目的効果基準を参考に先の課題を解きますと、お祭りや節分、初詣、クリスマスといったものはとりわけその宗教団体の構成員しか参加しない、参加できないといったものを除けば、たとえ他の宗教団体の信者でも参加するような行事であれば、援助、助長、促進に当たるとは言えないと解します。 反対に特定の宗教団体の布教を手伝うと思われるような「この宗教を信じましょう」「みんなでお経を唱えれば救われます」といったような、一般人の感覚からして外れているものでなければ問題がないと考えます。つまり、地域振興という経済的目的であって、世俗的だから当該行為には、宗教的意義はないということです。 そういった意味で、憲法上の精神的自由権の保障と言われると公務員の立場として慎重になることは必要ですが、しっかりと判例などを把握した上で事業を進めていくことが肝要と思います。 日本国憲法第二十条 1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。 中央大学法学部卒、中央大学法学研究科修了・修士専門は、刑事政策、犯罪学、行政刑法、刑法、行政法。

身近な不退去罪

第1回のテーマは住居侵入罪と同じ条文に規定されている不退去罪についてです。 市役所などの庁舎において市民の方々が入ることを拒むことは想定にしにくいと思います。 しかし、よくあるパターンは戸籍の申請窓口や休憩所を兼ねている椅子などに閉庁時間を過ぎて滞在しようとするケースが考えられます。 この場合は、庁舎管理者が明確な意思として本罪の成立を前提に不退去を止めるように求め、従わない場合は刑法犯として警察官を呼ぶ趣旨を告知するべきです。 また、警察官が到着したのちは改めて、不退去であることを伝え、従わない場合は刑事上の手続き等に則って、刑法犯として逮捕をしてもらうという手続きを考えるべきです。 また、現行犯人の逮捕は警察官など以外にも認められております。 ただし、警察官職務執行法に基づく拘束とは異なりますので制圧については慎重に取り扱ってください。 原則的にはその人を拘束することがメインではなく帰ってもらうことをメインとしているので捕まえることを目指さないことをお勧めします。 また、このスキームはいわゆるクレーマー対応にも応用できます。 正当な要求、意見は当然市役所として受けるべきと考えますが、同じ部署に繰り返し来る、帰らない、大声で怒鳴るなど対応に苦慮するケースが多いと思います。 程度が進めば、怒鳴ることによる暴行罪、傷害罪などになりますが、まずはその立証を目指すのではなく事態が小さい内に対応すべきと考えます。 刑法 (住居侵入等) 第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 刑事訴訟法 第二百十三条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。 第二百十四条 検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。 中央大学法学部卒、中央大学法学研究科修了・修士専門は、刑事政策、犯罪学、行政刑法、刑法、行政法。